「ALIAS」シーズン3 第2話(通算第46話) SUCCESSION2006年01月29日 22:00

ベルリン

夜のライツィグ宇宙開発センター。
二人の職員がエレベーターに乗ったことを無線で報告する清掃員に化けた侵入者。
それを聞き、時限爆弾を起動させるもう一人の侵入者。爆発まで1分。
爆発。ワイヤーが切れ、急速に落下するエレベーター。が、13階付近で止まる。
今度は逆に上昇するエレベーター。
そのまま屋上を突き破り、ヘリコプターにエレベーターごと連れ去られる。

ロス

二人きりのシドとジャック。
シドが洗脳されていないかテストをおこなっていた。
洗脳については問題はないようだが。耐えがたい拷問や過度な電気ショックなどによって、
記憶を失っているのではないか、とジャックは推測する。

でも、あの男(変装したシドらしき女性に殺されたロシア外交官のアドリアン・ラザレイ)は丸腰だった。
と自分を責めるシド。
それは時期尚早だ。その状況もわからないし、自分が殺したと確信が持てるのか?とジャック。
パパはこのテープをCIAに観せたくないだろうけど、彼等は観るべきよ。
そんなことをしたらお前は一生身柄を拘束されてしまう。
それでは、自分の身に何が起こったのかを調べることもできないんだぞ。
私は自分のことが信じられないし、CIAもそう思っているはず。
私はお前のことを信じている。
ラザレイのことをもう少し調べてみよう。恐らく生きているだろうお前の母さんなら何か知っているかもしれない。
私はもう1年近く彼女と話していないが、いつでも連絡は取れるようにしてある。彼女に接触してみよう。
色々あったが、お前には明日に向って生きてゆく権利があるんだよ。

シドの引越しの手伝いをしているワイス。
俺は何でこんなに重たい荷物を運んでんだろ。そこにあるビールが飲みたいよ。早く早く。
あなたってホントにお人好しね。
ようやく笑顔が戻ったね。僕も嬉しいよ。でも、ホントに一人で大丈夫?
いつまでも引き篭もってばかりいられないわ。
フランシーが死んで2年も経つのに、まだ二三日前に会ってたような感覚がするの。
ウィルは証人保護プログラムを受けてて、連絡とれないし。
私の友達は皆どこかへ行ってしまったのよ。
全員じゃないよ。僕がいるだろ。
それにしても、このアパート最悪。
冗談だろ?海岸からたったの2ブロックしか離れてないんだよ。
それに、これからはご近所さんなんだし、僕を信じてよ。まだまだ表情がかたいね。
幾つか質問してもいい?ヴォーンの奥さんのこと。彼女はどんな人?
溜息をつくワイス。このことを君に話すべきかどうかわからないけど、
君が死んだと聞いてからのヴォーンは、まるで地球の最後の日を迎えたようだった。
大袈裟に言ってるつもりはないけど、君には知っておいてほしい。
半年間、ヤツは死んでるみたいに生きてたよ。
それでも前向きに生きていこうと努力したんだ。
小さくうなずくシド。
俺はヴォーンに何とかCIAに戻ってくるようにと何度も言ったんだけど。
ヴォーンは復帰を考えていたの?
深く溜息をつくワイス。
そのことはもう気にしなくていいよ。ヴォーンはもう戻ってこない。
私が戻ってきたからなのね?そうでしょ?
ワイスの携帯が鳴る。
了解。シドと一緒に直ちにそちらへ向います。

拘束され、猿ぐつわをされている男が2名。
別の男の声。
協定世界時13:00、我々はCIAエージェント2名をベルリンで拉致した。
これは、世界に今尚残る超大国アメリカの権力に対する侵略的行為の犯行声明である。
我々が誰であるかは、さして重要ではない。我々の主張も同じく重要ではない。
我々の要求はいずれ明らかになるだろう。
一人のエージェントがストレッチャーに寝かされ、その部屋の扉が閉められる。
悲鳴をあげる男。

作戦本部。
ディクソン、ジャック、ワイス、シド、マーシャルがいる。
リンジーはいない。作戦会議中のようだ。
さっきの男の声が続く。
この音声ファイルの中には、ある場所に通じるヒントが隠されている。
それを探し出し、そこへ向え。そして荷物を受け取り、我々の要求に従え。
ジャックが言う。この二人のエージェントは、クラインとロッター。
ライツィグ宇宙開発センターで潜入捜査中だった。
我々は2人を拉致したのはカヴァナントであるとみている。
ロシア国家主義に派する政治結社だ。
旧ソビエト時代の国家中央委員会委員と元KGBエージェントから構成されている。
カヴァナントについての情報は少ないが、彼等は言わば組織化された犯罪者集団と言ってもいいだろう。

と、マーシャル。
ええっと、奴等が指定してきた場所っていうのが、ミュンヘンの歓楽街にある映画館なんだ。
何とそこは…ポルノ映画館。
で、今日何やってるのか調べてみたんだ、そしたら、あ、ドイツ語は良くわかんないから適当なんだけど、
「***の礼儀作法、その2」
あぁ、僕のことは全然気にしなくてもいいよ。新聞でも読んでるから。
といつもの調子。

ディクソン。その場所に誰かを一人で向かわせるのことはできない。
ジャック。彼等の要求は信頼に値するものかもしれない。
彼等は自ら規律を破ってまで、我々に要求を突きつけてきた。
確実な交渉のチャンスをみすみす逃してしまうようなことはしないだろう。
私が行くわ、行きたいの。とシド。
ディクソン。それではマーシャルと一緒に。以上だ。
作戦会議は終了。
シド、少しいいか?とディクソンが呼び止める。
ジャックはシドと目を合わせるが、立ち去る。
2人きりのディクソンとシド。
ワイスも一緒に行ってもらう。
本格的に復帰するには、まだ早過ぎるんじゃないのか?
こうして任務につくことで私は正気でいられるの。ディクソンお願い。
ミュンヘンに行くことは許可するが、これだけは知っておいて欲しい。
失われた時間を経験したCIAエージェントは君だけではない。
そうしたエージェント達の集まりがある。次は週末に行われる。

ミュンヘン。

映画館に入るシド。「入ったわ。」客はほとんどいない。
「マウンテニアを衛星で確認。」ディスプレイを見ながらワイス。
「周囲に不信なものは見当たらない。こちらはいつでも準備OKだ。」
ワイスとマーシャルは、ディクソンとジャックと一緒ににロスの本部で、作戦を後方支援している。

マグライトで館内を慎重に探るシド。手袋をつけ、座席の下に隠された荷物を発見する。
「箱を発見。爆発物かどうか調べてみるわ。」
小型の爆発物探知機をその箱にかざすシド。
「問題なさそうだわ。開けてみる。」
「マウンテニア、慎重にな。」とディクソン
箱の中を探るシド。手袋に血痕がつく。「まさか…。」
箱の中には、拉致されたエージェントの頭部が入っていた。
「何が入っていた?」ディクソン。
「拉致されたエージェントの一人…クラインの…彼の頭部が入っているわ。」
深く溜息をつく、作戦本部
「彼の口の中に紙切れが入っているわ。取り出してみる。」
「ロシア語で何か書いてあるわ。ここに彼等の要求が書かれているのね。」

ロス

作戦会議中。リンジーも同席している。
ディクソン「クラインを失ったことは我々にとって大きなダメージだ。」
「だが、ロッターはまだ生きている。」「彼を救出する。それが我々の任務だ。」
「こちらは、NSC(国家安全保障会議)局長のロバート・リンジー。今後、我々の作戦に協力してもらうことになった。」
リンジー「既に知ってのとおり、カヴァナントはロッターの身柄を引き渡すと言ってきた。サークの釈放と引き換えにだ。」
「私がここへ来たのは、NSCがサークの身柄引渡しを承認したことを知らせるためだ。」
シド「ちょっと待って。サークを釈放するなんでできないわ。」
「我々が知る限りでは、サークはもう既に彼の知る情報を全てはいたそうだが。」
「確かに、サークの刑事上の責任を問わないのは気がひけるが、もはやサークには今回の取り引きで使う程度の価値しかない。」
「彼等の本当の目的もわからないのに、どうしてサークを釈放することができるの?」
「我々は、カヴァナントがサークを殺害したいからだと考えている。この情報はアーヴィン・スローンから寄せられたものだ。」
「スローンによれば、サークはカヴァナントの中では第一級のターゲットになっているとのことだ。恐らく彼等は復讐したいのだろう。」
「あなたの”復讐説”が間違っていたら、テロリストに自由の身を与えることになるのよ。」
「この期に及んで、スローンの情報を額面どおり信用するなんて、どうかしてるわ。」
「君とスローンとの関係は承知しているが、ディクソンがスローンを信用できるなら、君にもできるはずだ。」
「はっきり言っておく。私はスローンを信用していないし、これからも決してそうするつもりはない。」ディクソンが口をはさむ。
「だが、我々にとって非常に有益な情報をもたらしていることは否定できない。私もこの取り引きには応じるつもりだ。」
「シド、君はワイスと共にメキシコへ飛び、サークを引き渡してきて欲しい。四時間後に出発だ。」
軽くうなずくシド。リンジーは席を立ち、すれ違いざまに「おかえり、シド。」と嫌味を言う。

シドはおもう。NSCはいつからテロリストと交渉するようになったのだろう。

本部内を二人で歩くシドとジャック。
「リンジーは、既にホワイト・ハウス内でも情報操作をおこなっている。」
「彼が判断が誤ったものだと発覚しても、それを隠蔽する政治力を持っている。彼には手が出せない。」
「それが間違ったことであることを証明したいわ。」
「お前は私を自由の身にしてくれたのだから、十分そうしている。」
「お前達がメキシコへ身柄の引き渡しに行っている間、私はスローンに会うためにチューリッヒへ向かう。」
「スローンは私が行くことを恐らく予期しているだろう。我々も先が見えているように振舞わねばならない。」
と、立ち止まるシド。目の前には任務中に殉職したエージェントの名が刻まれた墓碑。
その中にはシドの名前も載っている。
ジャック「これは直しておく。」「私はどこに埋葬されたの?」「遺体は火葬された。ヴォーンはその灰を海に撒いた。」

どこかの学校。教壇でフランス語を話しているヴォーン。フランス語の教師をしているようだ。
「僕が言ってることはわかるよね?じゃ、試験頑張ってね。」クスクスと笑う生徒達。授業終了。
その教室にシドが入ってきた。シドに気づくヴォーン。誰もいない二人だけの教室。
「あなたはフランス語の先生をやってるの?」「ああ。」
「あなたがCIAに復帰しようと考えてるのは知ってるわ。」
「こんなチャンスは滅多にないわ。私に遠慮して躊躇っているなら、もう忘れましょう、今までのことは。」
「つまり、私のことなら大丈夫。もう心配しないで。」
「この前、君は、僕が君のことを信じることができなかったから、君のことを諦めたんだって言ったよね?」
「それなのに、今日はどういうわけか、その言葉は本心じゃなかったって言いたそうだけど、僕には、君の気持ちがはっきりとわかったよ。」
「あの時、私はただ…。」「いや、いいんだ。もう終わりにしよう。」
「君が死んだと聞かされてからも、君が傍にいるような感じがして、君とずっと話してたよ。」
「たわいもない会話だったけど、独り言みたいに、ちゃんと君と話してたよ。」
「”今日の天気は?”、”新しい車買おうかな?”、”もう一杯飲む?”とかね。」
「そしたら、ある日、君が答え始めてくれたんだ。」「君の声は僕の心の中ではちゃんと聞こえていたんだ。」
「まるで、君が僕に傍に寄り添っているようだった。」
「朝まで酒を飲みながら、死んでしまったガール・フレンドに話続けてる。そんな自分には気づいていたけど、やめることはできなかった。」
「僕をCIAに復帰させたいって言うなら、この二つのことは覚えておいて欲しい。一つは、僕はまだ君を愛してる、それは凄く辛いことだ。」
「二つ目は、それでも、僕は自分に正直に生きていこうと思ってる。」
涙ぐみながら小さくうなずくシド。

チューリッヒ、スローンのオフィス。

秘書がスローンに報告している。
「世界銀行の頭取から、お時間が開いたら、オフィスに来て欲しいと。」
「頭取は、我々の癌研究に対して多額の寄付をしたいと言っているそうです。」
「彼の奥さんはベジタリアンだ。くれぐれも失礼のないようにな。」
電話が鳴る。電話に出るスローン。「私だ。」「彼をここに通しなさい。」
「ちょっと外してくれるか?」秘書達は部屋を出る。入れ違いでジャック登場。
「世界救済機構か。」「お前の大胆不敵な寝返りは実に疑わしく、ばかばかしい話だ。以前のようにとても危険な男ではないとしてもな。」
「君がここへ来ると聞いて驚いたよ、ジャック。」
「まさか、私が本当にお前が変わったと信じていると思っているわけではあるまい。」
「私の一貫した執着心は信じてもらいたいものだが。」
「ジャック。私はランバルディの謎を追い求めた。30年以上もかけて、世界中を飛び回って。」
「それらの作品を一つに組み立てても”平和”という言葉以外に何も産まれなかった。そんなことは全く知らなかった。」
”なるほど”といった表情のジャック。
「個人的には、拍子抜けしてしまった感じだ。」
「実際は、想像を絶する破壊力を持った武器が創られたのが、お前はそれを、意外な新事実が発見されたということで結論づけた。」
「あたかも、おみくじで大吉をひいたかのように振舞ってな。」
苦笑するスローン。「相変わらずの無神論者だな、ジャック。」「ともあれ、会えて嬉しいよ。」
「私がここへ来たのは他でもない。お前がシドニーの空白の2年間に関わっていることは間違いない。」
「何が起こったのか教えて欲しい。そうすれば、シドニーは心の平安を取り戻すことができる。」
「それと引き換えに、お前の恩赦を無効なものにする努力はやめよう。」
「ジャック、この件についてはあまり深く関わるな。君は何も見つけられないよ。」
「君がイリーナと連絡をとっていたことで収監されていたのは承知している。」
「君はイリーナの所へ行き、シドニーの捜索に力をかしてくれと頼んだそうだな。」
「私にはどうも理解できんのだ、君が二度と信じることはないと断言したイリーナと手を組むとは。」
「君にはそうした心変わりの才能があるのだから、私のことも信じて欲しいものだ。イリーナのようにな。」
「私が今まで犯してきた道徳的に疑わしい行動は、全てはシドニーを護るためにやってきたことだ。」
「お前には私と同じ言い訳はない。」「そうかな?」首を振るスローン。
棚から何かを取り出しながら「私はシドニーの死についても調査した。」
「このファイルの中には、シドの死について私が調べ上げた全ての手掛かりが入っている。」
「だが、結局何もわからなかった。」ファイルを机の上に置く。
「このファイルを君に渡そう。少しでも役に立てば良いのだが。」
「君ならきっと何かを探し出すことができると信じているよ。」
ファイルを手にするジャック。「お前はシドニーの失踪に関わっていないということか?」軽くうなずくスローン。
「お前が、人生の中で最悪の過ちを犯してしまったら、私が葬ってやろう。」立ち去るジャック。

シドは作戦本部にある牢獄に向かう。そこにはサークがいた。髪は短く刈っている。
「これは驚いたな。」
「あなたを引き渡す前に聞いておきたいことがあるわ。」
「お役に立てるかどうか。」
「はぐらかさないで。私が生きていることは知っていたんでしょう?」
「シドニー、僕は君のことを非常に優秀な捜査官だと評価していたけど、
まさか、死んだふりをするのにも長けていたとは。あの死体は確かに君のものだったはずなのにね。」
「で、聞きたいことって?」
「焼け跡から発見された死体は君のものではなかった、では誰の死体だったのか?」
「あなたの供述調書を読んだわ。」
「あなたとアリソン・ドレーンという女がフランシーの殺したことも。」
「それなら、僕が捜査に協力的だったことも知っているよね。」
「君がどうしたいのかを率直に話してくれれば、僕は喜んで君に経緯を払うよ。」
「あの爆発は、CIAに私が死んだと思わせるためのものだったんでしょう?」
「私は、スローンに拉致されたと考えてるの。あなたなら、その理由がわかるはずよ。」
「でも、そのことについては何一つ証言していない。」
「君の言い分はそこまでとして、この2年間、君は自分がどこにいたのかわからないんだね。」「全く。」
笑い出すサーク。「信じられないよ。」「すまない、笑ったりして。僕はただ…何て言っていいかわからないよ。」
「いいかいシドニー。スローンが君の誘拐を企てたとしても、僕は何も知らないんだよ。」
「私があなたのことを信じていなくてもお構いなしってことね。」
「そんなことはどうでもいいことさ。」
「僕はあと24時間で自由の身だ。だけど、君の謎はわからないまま。」
「メキシコで会いましょう。」立ち去るシドニー。

メキシコ

平原を2台のバンが並走する。
バンの中でシドは部下に指示する「引き渡し場所はソノラ砂漠。」
「双方とも、後方支援に5人までの同行が許されている。」
「身柄の引き換えが始まったら、サークとロッターは同時に解放される。」
両車止まる。シルバーのバンから武装した男達が降り、周囲を警戒する。
シドも車を降り、黒いバンに乗っているサークの所へ行く。
「カヴァナントという組織は、僕にも全く見当がつかないんだ。君達がそうであるのと同じようにね。」
「何故、彼等が僕の身柄を求めているのか想像もつかない。」
「直ぐに、わかるわ。」サークの拘束具を外すシド。
「これは危険な取り引きなんだな?」黙ったままサークを見るシド。

前方から2台のセダンがこちらに向かって走ってくる。
シドはサークを車から降ろす。
車が止まり、中から3人の男達が出てくる。銃を持っている。
すると、その男は空に向かって証明弾を撃つ。
「作戦本部聞こえる?合図を確認した。」シドが無線で伝える。
「取り引きに応じていいのね?」「マウンテニア、許可する。」とディクソン。
今度はシドが空に熊って証明弾を撃つ。
すると、もう1台のセダンから、更に3人の男達がロッターと共に降りてくる。
「ロッター捜査官を肉眼で確認。」
「了解、マウンテニア。サークを引き渡せ。」
ロッターは一人シド達の方へで近づいてくる。
サークの手錠を外すシド「あなたの出番よ。」
サークも一人でカヴァナントの方へ歩き出す。黙って見守る一同。
すると別の方向から3台のSUVが近づいてくる。
サークとロッターは立ち止まり、その車の方を見る。
「こっちに車が向かってくるわ。大至急確認して。」シドは無線で連絡。
「マウンテニア、こちらには何の反応もない。衛星で確認する、待機してくれ。」慌てるディクソン。
「急いで。その前にあの車はこっちに来てしまうわ。」「カヴァナントは裏切られたと思うわよ。」
その車はどうやらパトカーのようだ。何時の間にか上空には1台のヘリも近づいている。慌てるカヴァナントの面々。
シドも慌ててヘリを見る。「ヘリもこっちに向かって来てるわ。あれは私達のヘリよ。」
ヘリからの声「CIA捜査官に告ぐ。私はデルタ・フォースのトラスク軍曹だ。全員、武器を降ろせ。」
「NSCの命令により、この作戦は中止された。」
ヘリに向かって発砲するカヴァナントの面々。「車に隠れろ。」銃撃戦が始まる。
サークとロッターは地面に伏せる。
パトカーが現地に到着する。
「シドニー、どうした?」とディクソン。
「デルタ・フォースがいきなり現れたわ。リンジーの仕業よ。」
「リンジーを今直ぐ呼べ。」怒るディクソン。
尚も激しく続く銃撃戦。現地警察官も加わっている。
「黙っていられるか。お前は私の捜査官を囮に使ったんだぞ。」ディクソンがリンジーに電話で話している。
「私は、サークを引き渡さずに、君の捜査官を救出することを命じたのだ。」反論するリンジー。
「事前に君に知らせていなかったことについてはすまなかった。」「だが、君が黙っているとも思えなかったのでな。」
「何て奴だ。」「あぁ、後でかけ直してくれ。こっちも少し忙しいんでな。」
受話器を置くディクソン。怒りに満ち溢れている。
尚も続く銃撃戦。ヘリが撃たれコントロールを失う。「撃たれた。飛行は無理だ。」
「ワイス!」シドが叫ぶ。カヴァナントの一人は車を走らせサークとロッターの元に向かう。
二人に銃をつきつけて「二人とも乗れ!」と言う。
ワイス「奴らは二人を連れて逃げる気だ。」走って追いかけるシド。しかし間に合わず車は遠ざかる。
悔しさに溜息するシド。

ロス。

男子トイレ。リンジーが用を足している。そこにシドが入ってくる。
「何てことだ。」驚くリンジー。手を洗っていたが、思わずスーツが濡れてしまった。
「あんなことがなければ、私達はロッター救出できたのに。」怒るシド。
「君は一体どこに入ってきたと思ってるんだ?」
「ロッターが殺されたら、あなたの責任よ。」
「私の責任だって?そんなことを言うために態々ここに入ってきたのか?」
「言っておくけど、またこんなことをしたら、黙ってはいないわよ。」
「あなたが大統領のゴルフ仲間なんてことは私には全く意味のないことよ。」
「あなたが仕出かしたことはほとんど犯罪行為だわ。」
「言っておくが、私はNSCの局長だぞ。その気になればジャックがいた牢屋にブチ込むことだってできるんだぞ。」
「やりなさいよ。権力を悪用するっていうのはこうゆうことなのね。いい勉強になったわ。」
「言いたいことはそれだけか?ここは男性用トイレだ。」「あなたが入れたようなもんだわ。」トイレから立ち去るシド。

薄暗い部屋の中、サークが一人で座っている。
男がワインとグラスを持って入ってくる。「君のお気に入りのワインだろ?」
「どこかで会ったか?」サークは聞く。「いや、初めてだ。だが、君は私の弟のアントニー・サンコーを知っているだろう?」
「これは僕にとって最後の晩餐という訳かな?」ワインの栓を抜きながら「そんなことはないさ。」「まぁ、そうでない保障はなにもないが。」
「私は、君が弟の車に爆弾を仕掛けたことを知っている。だがそれは弟を殺害する目的ではなかった。」
「だが、君は私に借りがあるってことだよ。」「それで幾ら払えば解放してくれるんだ?」「8億ドル出せばな。」
「8億ドル?」「僕はある場所に相応の金を隠してある。」ニヤリと笑う男。「さぁ、一杯どうだね?」

作戦本部

ヴォーンが復帰した。ディクソンと握手をしている所にシドが現れる。あんまりウェルカムって感じじゃない表情。
ディクソン「シド、ヴォーンの復帰が正式に認められた。」
「手続上、いきなり現場という訳にもいかないので、暫くは分析官としてだが、それも時間の問題だよ。」
「ところで、君達二人が私に少し配慮してもらいたい、と言うのであれば、今のうちに言いたいことは言っておいた方がいい。」
シド「復帰おめでとう。」ヴォーン「ありがとう。」ディクソン「いいだろう。」
そこにジャックも現れる。ヴォーン「お久し振りです。」
ジャック「カヴァナントが何故サークに興味を持っているのかが判明した。」
「今朝、午前10時。サークはケイマン諸島にあるソーントン信託銀行にウシェク・サンコーと一緒に現れた。」
「サンコーはカヴァナントの人間と目されている。」

その銀行。
サークとサンコーが行員に案内され金庫の前に来る。

ジャック「その銀行の地下にある大口顧客専用の金庫室に入る際に指紋認証を使った。」

指紋認証で金庫を開けるサーク。

ジャック「その金庫の中には少なく見積もっても8億ドル以上の金塊がある。」
「さらに驚くべきことに、サーク自身、自分が何故このような大金を所持する権利があるのか分からないようだ。」
ディクソン「権利?」
ジャック「ある政府機関の記録によると、8ヶ月前、アンドリアン・ラザレイというロシア外交官が殺害された。」
ジャックにちらりと視線を向けるシド。
「彼を殺害した者は未だ特定できていない。」「だが、私が持つ情報源によると、ラザレイはロシア王室ロマノフ家の末裔であるようだ。」
「その金塊は、ラザレイが死んだ際に信託されたものだ。そして、その金塊はサークの物に。つまり、サークはラザレイの息子ということだ。」
驚くシド。そこにワイスとマーシャルが現れる。
ワイス「よお、ヴォーン。」
「メキシコで逃走し砂漠に乗り捨てられたセダンを衛星で追尾した所、フランクフルトのナイト・クラブが浮かび上がってきました。」
「そこは合成ドラッグの密売所として知られている所です。」
「そこはカヴァナントの隠れ蓑であるとの分析結果が出ています。」
ディクソン「我々の人質がまだ生存していると信ずるに足る根拠はあるのか?」
ジャック「ある。カヴァナントはロッターが潜入捜査のリーダーで最高機密情報を持っていることを承知している。」
「ロッターから入手できる情報は、彼等にとって非常に貴重なものだ。」
ワイスがディクソンにファイルを見せる「この男はドラッグのディーラーのオットー・イデル。このクラブを運営しています。」
「この男なら、ロッターが捕らわれている場所を知っているでしょう。」
ディクソン「わかった。君達はロッターの救出に向かってくれ。」
いつものようにマーシャルの明後日な話が始まる。
「あんまり自身がないんだけれど、シドが生物化学を専攻してる大学生に成りすましてクラブに侵入するなんて作戦どうかな?」
「寮の部屋でMDMAとか造っちゃって退学させられたハーバード大学の落ちこぼれっていう設定。ホント勿体無いよね。あ、覚醒剤でもいいんだけど…」
ディクソン「そこまでだ、マーシャル。さあ、作戦の準備だ。」
三々五々に散る一同。いつものように一人ぼっちにされちゃうマーシャル。

シドとジャックが外で口論している。
ジャック「CIAは、遅かれ早かれ、サークがラザレイの息子であることを突き止めていたはずだ。」
「私が自ら情報を公にしたとしても、お前にとって何らリスクはない。」
深く溜息をつくシド。
ジャック「あの隠しカメラの映像がなけれれば、お前とラザレイの殺害を結び着けることはできない。」
シド「これは単なる偶然なんかじゃないわ。」
「私はラザレイの死に関与してて、その9ヶ月後に、カヴァナントはサークの身柄を8億ドルの遺産と引き換えに自由にしたのよ。」
ジャック「カヴァナントがお前の失踪に関わっていることは間違いないようだな。」
「強要されていたのか、あるいは他の我々の知り得ない事情によるものか、いずれにせよ、奴等はお前に暗殺を実行させた。」
「今晩、お前の母さんとコンタクトをとることになっている。」「何らかの手掛かりを知っていれば良いのだが。」

閑散とした屋内駐車場の車の中でジャックは端末のインスタント・メッセンジャーを操作している。
「音楽愛好家を探している有名な作曲家」と入力し、イヤホンを耳に付けるジャック。
「”私のヘンデル”がプライヴェート・モードでのチャットを要求しています。」とのメッセージ。
”私のヘンデル”ことイリーナのメッセージ「ロンドンのグローブ座で、あなたの看板を発見したときは我を疑ったわ。」
”モーツアルト K182番”ことジャックが入力「良かった。君は生きていたようだな。」「シドも生きている。」
イリーナ「本当に?彼女は元気?」
ジャック「CIAに復帰したが、過去2年間の記憶が全く無い。」「君に頼みがある。アンドリアン・ラザレイという男のことを知りたい。」
イリーナ「私が知ってる全ての情報をそっちに送るわ。」「あなたに逢いたいわ。」
暫く考えてから、ジャック「私もだ。」
チャット終了。

フランクフルト

ナイトクラブに変装したシドが入る。奥に座っているオットーの元に行く。途中ボディ・ガードに身体検査をされPDAを渡す。
シド「これを彼に。」オットーに確認するボディー・ガード。「通せ」とオットー。
オットー「君は科学者にしておくには勿体無い程と綺麗だよ。」
シド「あなたにお会いできて光栄です。」
オットー「君が俺よりも上物のヤクを造れるとは思わないが、門戸は大きく広げておく性質でな。」
シド「あなたの利益を今の3倍にすることができるわ。」
オットー「ほう?どうやって?」
シド「あなたの薬を更に上物にするの。」と言って、オットーにPDAを渡す。
上着のボタンを外すシド「どう?」

クラブ内、二人で踊るシドとオットー
オットー「たいしたもんだよ。」「一体どこでこんな芸当を勉強したのかな?」
シド「ハーバードで生物化学を専攻してたの。でも、だからと言って、卒業式でスピーチを求められることはないでしょうね。」
オットー「教授どもが損した分、俺が儲けるって訳か。」
シド「あなたの薬、1リットル分欲しいんだけど。」
オットー「たった、それだけでいいのかい?」
シド「私がそれを化学的に合成し直すわ。そしたら、それをあなたのと比べてみて、そしたらあなたのもの。1週間以内でできるわ。」
「例え、あなたが気に入らなくても、あなたは私に借りなんかないわ。」
オットー「別に俺は気にないぜ。君に借りをつくったて。」
オットーの個室に移動する二人。
オットー「さあ、お構いなく。」「ちょっと待っててくれ」と言い隠し金庫を開け、小瓶を取り出す。
「末端価格では5万ドルは下らない代物だ。」と言ってシドに見せる。
シド「試してみてもいいかしら?」オットー「遠慮なくどうぞ。」
上着を脱ぎ、小瓶をてにするシド。
オットー「勿論、俺は君をこのまま帰すつもりはないよ。それなりの見返りが欲しい。」「わかるだろ?」
小瓶の中の液体を注射器に移しかえるシド。
シド「ごめんなさい。私お金は全然持ってないの。」
オットー「構わないさ。他の方法で支払ってくれたらな。」とシドに近付くオットー「ん、気泡が入っているじゃないか。」
「うお!」シドの攻撃開始。注射器をオットーの首にあてがう。それを本部で見守るディクソン、マーシャル、ヴォーン。
シド「私の言うことを聞かないと、この注射器を刺すわよ。」「地下二階の非常警報装置はどこ?」
オットー「畜生!」
シド「言うことを聞きなさい。さもないと、動脈に刺すわよ。」
オットー「わかった。言う。ホールを降りて最初のドアだ。」「だが、俺は管理してるだけだ。」「認証コードは知らない。嘘じゃない。」
オットーを気絶させるシド。地下に降り、暗証コード入力装置の前で本部に連絡するシド。
シド「マウンテニアから作戦本部へ。非常警報装置を発見。」「ハッキングしてみるから、少し時間を頂戴。」
ディクソン「了解、マウンテニア。」「ブルー・チーム聞こえるか?」「命令があるまで突入するな、アラームが未だ作動している。」
ワイス「了解、作戦本部。後ろ入り口の外で待機する。」「マウンテニアが解除に失敗しても、我々は突入します。」
靴底に隠した工具を取り出し解除にとりかかるシド。ケーブルをアラームのソケットに挿す。認証コー検索装置と接続したようだ。
ディクソン「マウンテニア、北のホールへ続く廊下を降りれば地下に入れる。そして、そこは最後のドアがある。そこにロッターがいる。」
ディクソンとマーシャルはクラブの図面をモニターで確認している。
ヴォーン「マーシャル。どうしてこのケーブルが制御室に通じているとわかるんだ?」
マーシャル「うん、ある種のフィルタリングみたいなものをかけてみたんだ。」
認証コード検索装置が作動。シド「認証コードが判ったわ。これから入る。」
ヴォーン「この警報装置は何の為にあるんだ?」
マーシャル「消火用のハロン・ガスを噴出するシステムだと思うよ。」
ヴォーン「シド。止めろ。それは間違ったコードだ。」「それを解除すると、今度は他のアラームも連動する。」
「ネパールの作戦の時と同じだ。」「その数字はパスワードに変換されて、他の装置が作動する仕組みだ。」
「ペンを貸して。」とマーシャルを急かすヴォーン。数字を読み上げるシド。
ディクソン「ブルー・チーム。スタンバイだ。」ワイス「了解。」
ヴォーン「わかった。”トップ・ハット”だ。それがパスワードだ。」そう入力するシド。
ヴォーン「うまくいった。アラームは無力化された。」作戦本部一同旨を撫で下ろす。
ディクソン「ブルー・チーム、突入開始だ。」裏口を爆破し突入するワイスのチーム。一方、シドも脱出をはかる。
ヴォーン「ブルー・チーム、三時の方向に、敵2人。」銃撃戦が始まる。敵を倒す。ワイスとシド合流。
倒した男から認証カードと銃を奪うシド。そのカードで扉を開けると、中にはストレッチャーに寝かされたロッターと医師らしき者が1名。
「CIAよ。動かないで。」医師が銃を取り出そうとするが、シドが先に発砲。医師を倒す。
ドイツ語でロッターに話し掛けるシド「私達はCIAよ。もう大丈夫。」
シド「作戦本部。人質を無事救出。」
倒された医師は未だ生きていた。「君は約束を守ってくれたな。」「君は私を殺すと言っていた。」
銃を構えながらも驚きを隠せないシド。
「私は君のことが大好きだったんだ。」「君は約束を守った。」
シド「あなたは一体誰なの?」「一体何のことを言っているの?」「何故、カヴァナントは私から2年間を奪ったの?」
生き絶える医師。動揺がおさまらないシド。

ロス。

ディクソンが言っていたミーティング。
任務でトラウマを負ったエージェント達が円を組んで自分の体験を話し合っている。
シドも参加している。
参加している男「最後に覚えてることは、確か、コクピットでミサイルにロック・オンされてアラームが鳴ってたことだ。」
「気がついたら、イラクの病院にいた。敵の特殊部隊に運ばれたんだ。」「そこでの18ヶ月間に一体何が起こったのか今でもわからない。」
女「私にとって一番辛いことは、ぎゃくにはっきりと覚えていること。」「忘れることができないでいるの。」
別の男「記憶を失ったことより厄介なのは夢をみることだ。」
「その夢の中での出来事なんだが、それが私に実際に起きたことなのかわからないし、
それとも、答えがみつかるようにその隙間を埋めようとしているのかもわからない。」
代表の男「ありがとう。トム。」「今日は新しいメンバーを紹介しよう。シドニーだ。」「よく来てくれたね。」
「ここにいる皆の気持ちが楽になるような、何か話したいことはあるかい?」
シド「今はただ聞いているだけでも気持ちが楽になるわ。本当にありがとう。」
男「復帰してからどのくらい経つ?」シド「1週間とちょっとよ。」
男「復帰してから悪夢をみだしたの?」シド「いいえ。」男「ならいいね。」

ミーティング終了後、作戦本部内のディクソンの部屋に急ぐシド。
シド「私のことを思ってあのミーティングを紹介してくれたことには感謝するわ。」「私の他にも同じような体験をした人達が沢山いることもわかったわ。」
「でも、無理矢理あんなミーティングに入れないで。」「ディクソン、ヴォーンを失ったことが辛くないと言ったら嘘になるけど、私がまだ未練たらたらだと思ってるの?」
「ええ、勿論そうよ。」「でも…」言葉を遮るディクソン「シドニー。」「こちらは、ローレン・リード」ソファに女性が座っている。
「彼女はNSCから来た新しいスタッフだ。」シド「ごめんなさい。話の途中だったのね。」立ち上がりシドに近付くローレン。「気にしないで。」とシドに握手を求める。
ディクソン「君は男性用トイレにまで入ってリンジーに嫌味を言いたい放題言ったそうだな。間違いないか?」
シド「ええ、そうよ。」
ディクソン「そうか、彼はワシントンに戻ることに決め、自分の後任にこちらにいるリード捜査官を指名した。」「」カヴァナントの捜査に協力してくれる。」
「彼女は、クレムリンとの協同捜査の一環として、アンドリアン・ラザレイの殺害の件についても調査中だ。」
シド「何かわからないことがあれば遠慮なく言ってください。」
ローレン「あなたに知っておいて欲しいことがあります。」「私の夫はマイケル・ヴォーンです。」
驚きを隠せないシド「よろしく。」

やっと終了。次回に続くか?